「全国自治体ICTサミット2020」に参加しました

■ GovTech&World部 齋藤レポート

 2020年1月31日(金)に開催された、国際大学グローバル・コミュニケーション・センター(GLOCOM)主催の「全国自治体ICTサミット2020」に参加しました。“災害時コミュニケーションとICT利活用”というテーマで開催された本会で西宮市・熊本市・常総市・鎌倉市の首長らが登壇し、各市における取り組みを紹介するとともに市長としての意見を述べました。続くパネルディスカッションでは災害発生時の情報発信について議論し、参加者からも活発に意見や質問が寄せられていました。

■登壇者

 ・阪神・淡路大震災を経験した 西宮市の石井 登志郎 市長
 ・2016年熊本地震を経験した 熊本市の大西 一史 市長
 ・平成27年9月関東・東北豪雨で市役所が浸水した 常総市の神達 岳志 市長
 ・令和元年台風第15号で甚大な被害があった 鎌倉市の松尾 崇 市長



■災害時の住民への情報発信

 首長らが登壇者ということで、自治体職員の視点とは異なる問題提起がなされました。例えば、災害時の市民への情報発信については、職員はあらかじめ定められたマニュアルに則って迅速かつ正確に対応することが求められる一方で、市長としては住民に寄り添い、住民が適切な行動ができるように様々な手段で取り組んでいる具体的な事例が紹介されました。

 今回市長らが発表した各市で行っている取り組みと東日本大震災の際の対応とを比べ、テクノロジーの進化とそれらが社会に浸透していることに驚かされました。東日本大震災のときは、スマートフォンがまだ普及しておらず、市民が情報収集する方法としてはテレビやラジオ、紙媒体が主流でした。パソコンは電気とインターネットがつながらないと使えないことや、そもそも家財も被災してパソコンが使えない、役所でも同じくという状況だったため、TwitterやFacebookが使われたとはいえ、まだまだSNS黎明期だったこともあり、被災していない地域でパソコンを使っての情報受発信が主だったと記憶しています。それが今では緊急の通知は各自の携帯電話・スマートフォンに届き、TwitterなどのSNSでリアルタイムの情報拡散が当たり前になりました。SNSは誰もがアクセスでき、その情報源については虚実が入り混じる媒体なので使い方が難しい一面があるものの、発災直後および応急期の情報発信媒体としては住民が多くアクセスしている媒体を利用することは効果的であると考えられます。



■パーソナライズされる情報発信

 一方で、今後はパーソナライズされた情報をいかにして住民に届けるかということに焦点をあてた議論が進むでしょう。どの分野でもそうですが、結局「私が使えるのはどれなの?」ということがわからないと、特に非常時においては使い勝手が悪いものです。東日本大震災からの復旧復興を後押しすべく開設した「復旧復興支援ナビ」の初期構想段階においても、「あなたの状況は?」「あなたの要望は?」と問いかけることで情報を絞り込み、住民一人ひとりに適した行政サービス情報をなるべくピンポイントで提供できるようにすることを議論しました。生活再建を支援する行政制度という点においては、発災からある程度の時間が経過し、幅広に情報を提供しても住民が自身で取捨選択できるくらいに気持ちの余裕があると想定され、すこし趣が異なるのかもしれません。災害発生時のパーソナライズされた情報は、行政サービス情報よりももう少し広範なものとして捉えられるかもしれません。例えば日本語が分からない方々に多言語で情報を提供するとか、土砂崩れが起こりそうな土地に住んでいる人にいち早く非難するように伝えるといったことも含まれます。この点で、復旧復興支援ナビを含め現状のWebサイトの形でできることは限られています。

 そのような状況のなか、AIスピーカーがすこしずつ市民権を得始めています。AIスピーカーが世に現れた当初は機械に話しかけるなんて……という反応が多数だったかと思いますが、スマホの操作に慣れない高齢者にはAIスピーカーの親和性が高いという鎌倉市の事例紹介は興味深いものでした。そういえば、我が家のAmazon Echoは60歳越えの母と、1歳の甥っ子やそのいとこたち(小中学生)にとってよい遊び相手となっています。スマホなどのデバイスに慣れることが難しい高齢者や、新しいものに抵抗がない子どもたちに向け、AIスピーカーを使ったサービスが増えていく可能性を感じました。



■進化するテクノロジーとオープンデータの可能性

 熊本市の大西市長の発言にあった「公助に頼らない」「自助・共助を強化」「支援するためのテクノロジー」という意味では、その人の位置情報とハザードマップ上の浸水範囲が連携して、「あなたの地域は水没する恐れがあるから早めに〇〇〇避難所へ避難してください」というような情報をAIスピーカーがお知らせしてくれるとよいのではないでしょうか。そのためには避難所情報がオープンデータ化されていて、且つ情報の更新がきちんとなされている必要がありますが、そう難しいことではないと思われます。住民の状況に合わせた情報を提供するサービスは比較的早く実現できそうです。

 Amazonのアカウント情報には住所が含まれているためその情報と連携した防災・備災の取り組みをAmazon Echoを使って実験的に実施してみるとよさそうです。災害だけに限らず、現在報道されている感染症などの情報も含めてもよいかもしれません。位置情報やスケジュールと連携して一人ひとりに最適な情報がAIスピーカーを通して発信されると、住民の利便性が飛躍的に向上しそうです。